2016年4月22日
200系クラウンパトカー(白黒)の値段はこちら覆面とは、一言でいえば、警察の隠密車両のことです。覆面は、事件捜査に使用する車両と、交通違反の取締に使用する車両とに大きく二つに分けられます。
ここでは、後者の交通違反の取締に使用する覆面車両、その中でも台数が多いクラウンの覆面を取り上げます。
交通違反の取締に使用する覆面車両は、警察庁での正式名称を「交通取締用四輪車(反転警光灯)」といいます。
なぜ、“反転警光灯”というかといいますと、左の写真のように天井に蓋があって、そこから赤色灯が反転して出てくるからです。
覆面といえば、手で赤色灯を天井に乗せるイメージがありますが、こちらは事件捜査等に使用する覆面車両です。
グリル内の補助警光灯LED |
車両の仕様は、前述の反転警光灯に加え、フロントグリル内に補助警光灯、3,000㏄です。これらは警察庁の調達の際の仕様書に記載があります。
白黒のパトカーのサイレンの音は、天井の赤色灯の中にスピーカーが設置されており、そこから音が出ます。
では、天井に赤色灯がない覆面はどこから音が出ているかというと、当然、覆面なのでスピーカーを外に付けるわけには行かず、そこで、策として運転席側のバンパー内にスピーカーが隠されており、そこから音が出るようになっています。
警察庁の調達では、車両の塗装色は市販車の車両の中から納入メーカーが選ぶことになっており、パトカーカタログによれば、下記のようになっています。
カラー色 |
市販車 |
警察仕様 |
|
パトロールカートーニング (ホワイト/ブラック) |
× |
○ |
|
ホワイトパールクリスタルシャイン |
○ |
× |
|
プレミアムシルバーパール |
○ |
× |
|
シルバーメタリック |
○ |
○ |
|
ブラック |
○ |
○ |
|
ブラッキッシュレッドマイカ |
○ |
× |
|
シルキーゴールドマイカメタリック |
○ |
○ |
|
ダークブルーマイカ |
○ |
○ |
警察仕様の車両については、下記の記号であらわされます。覆面の場合は、DBA-GRS202-AETKHとなり、市販車は、グレードによって異なりますが、DBA-GRS202-AETQH等と表記されます。
DBA |
排出ガス規制適合表示記号 | DBA:平成17年基準排出ガス75%低減レベル車 |
GRS200 GRS201 GRS202 |
車種表示 | GRS200:4GR-FSEエンジン、2WD車 GRS201:4GR-FSEエンジン、4WD車 GRS202:3GR-FSEエンジン、2WD車 |
A |
車体表示記号 | A:クラウンパトロールカー(ロイヤル) |
E |
ボデー形状表示記号 | E:4ドアセダン |
T |
変速機表示記号 | T:6速自動フロアシフト |
R K |
グレード表示記号 | R:制服パトロールカー K:覆面パトロールカー |
H |
原動機仕様表示記号 | H:DOHC、EFI直接噴射式 |
市販車との違いは、なかなか詳細に紹介することによって捜査に影響が出るのも問題があるので(任務は交通取締ですが、位置付けは捜査車両です)、車両の特徴のごく一部を紹介します。
反転警光灯が天井に取り付けられているので、天井に見切りがあります。この取付け方法は、後付ではなく、車体のフレーム、ルーフの鉄板のプレス形状から異なっており、かなり特殊です。
上が覆面、下が市販車 |
ドアノブ、正式名称をアウトサイドドハンドルといいますが、こちらが写真のように安価なものとなっています。
市販車では、ドアノブにタッチするだけでドアの開錠・施錠ができますが、そういう高級車仕様のものがありません。市販車のそれと比べると、肉薄で、「安物」と思うほどです。
パトカーのパーツカタログの品番から確認したところ、カローラアクシオ(2012年4月~)とプリウス(2009年4月~)の一部のグレードの車両の部品と同一であることが判明しました。今後、引き続き詳細を調査します。
その他、内装は、外観がロイヤルサルーンなのに対して、どちらかというとアスリート、もっというと白黒パトカーと同じ仕様になっています(写真は白黒パトカーの車内)。
これは、警察庁が定める仕様書によるもので、掃除がやりやすいように、濡れても大丈夫なようにビニールレザーにするように定められているからです。
覆面パトカーの見分け方として、後ろのエンブレムに「CROWN」とグレードを示す筆記体のエンブレム「Royal Saloon」が市販車にはありますが、クラウン覆面パトカーは、もともとロイヤルサルーンではないためグレード表記がなく、これを見分けるポイントと紹介されていることがあります。
しかし、最近、後付でエンブレムを付けている車両が確認されているので(警視庁購入のクラウン覆面はメーカー装着)、エンブレムがあるからといって「覆面じゃない」という判断はできませんのでご留意ください。
タイヤは市販車と違いはありません。180系クラウンの車両は、黒鉄ちんホイルにマークXのホイルキャップを装着していましたが、200系では、白黒パトカーも含め市販車と同様にアルミホイルを装着し、3,000㏄の交通取締用では17インチのアルミホイルを装着しています。
ちなみにディーラーで純正ホイルだけを一本購入すると45,000円ほどだそうです(白黒パトカーも同様です)。
上が白黒パトカー、下が市販車 |
エンジンルームは、市販車は高級感や断熱対策で様々なカバーがありますが、パトカーではそういう物がすべて撤廃されており、反転警光灯仕様も同様と思われます。
ルーフには、警察無線アンテナを装備していますが、最近は室内タイプも増え、しかも昨今の盗難事件もあって、今後、減少していくと思われます。
200系クラウンが発売されている当時、新車価格は、3,450,000円からとなっていました。
覆面も白黒パトカーと同様に警察庁(国)が大半を一括で購入しており(一部、自治体が購入するものもある)、競争入札方式が採られており、複数の業者が参加した時には、一番安い業者が落札します。時期によって異なりますが、トヨタ自動車のみが参加するケースが多いです。
平成26年3月20日納入期限の入札を例にみると、仕様書により3,000ccのエンジンを搭載していることとなっています。
それをトヨタ自動車が135台を357,023,000円で入札しましたが、最低価格に達せず辞退し(競争入札比較表)、374,732,400円(3億7千4百32万400円)で随意契約しました。一台当たり約2,624,000円からLED表示装置付が3,124,000円(税抜き(契約時の消費税は5%))です。こちらについては、契約内訳書から判明します。
ちなみに、同じく200系の2,500㏄の23年度の白黒パトカー(無線警ら車2WD)は、赤色灯の昇降装置が付属して3,507,000円で(こちらのページを参照)、価格が無線警ら車より排気量が大きいにもかかわらず安いこと、また自治体が独自に購入する場合は、同形式で一台が4,526,847円~5,000,000円というところは特筆すべき点です(「都道府県が購入するパトカーと覆面の値段」)。
その他、メーカーからは製作図面承認申請書が提出されています。
性能は、先代の180系クラウン(通称ゼロクラウン)の取締用四輪車にくらべ加速はいいが、小回りが悪いとのことです。
また、よくパトカーがスーパーカーのように言われることもありますが、昔の話で性能自体は市販車の200系クラウンの3,000ccと変わらないことは諸元表からも明らかです。
以上
※写真は当該車両を保有している県警に掲載の確認を得ております。
※資料は、情報公開により公開されたものです。
筆者紹介
パトカー好きの某自動車会社のパトカーとは縁も所縁もない部署の技術屋さん。ちなみにIT職とも無縁。
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