2022年8月20日
最近、映画やドラマでパトカーや救急車が街中を走っているシーンが無くなったと思いませんか?
映画やドラマで登場するパトカーや救急車は、劇用車といって本物ではありません。実は、近年、ある条件を満たさなければ街中を走ることができず、それで映画 やドラマで走るシーンを見ることが無くなったのです。
これは、法律が変わったのではなくある事件のをきっかけに法の厳格適用に至ってしまったために起きたのです。
2006年2月9日の読売新聞のオンラインの記事、同年2月8日の毎日新聞夕刊の記事によれば、ドラマ「新・京都迷宮案内」に使用される車検が切れた救急車 など3台に仮ナンバーを市町村から不正に取得して現場まで運転して運んで摘発されたというものです。
何が問題になったかというと、仮ナンバーは車検などの検査をするために市町村に申請ができるもので、本件においては「車を販売するため」と虚偽の申告をして いたことが問題となりました。
毎日新聞の記事には、府警の話として「映画制作会社が警察から公道でドラマなどの撮影許可を得た場合、車検切れの乗用車などはカーキャリーなどに積んで現場 まで移動させ、撮影用の架空ナンバーを取り付けてから走行させる」とのことです。
そして、この事件に敏感に反応したのが警察庁ではなく国土交通省で、警察庁と協議した結果、道路使用許可を得ている場合に限り、仮ナンバー(正式には臨時運 行許可という)を許可しても差し支えないとの結果に至りました。ただし、その際には道路運送車両法等のその他の法令に適合する車両でなければならないとされて います。つまり、例えば赤色灯を取り付けた状態では回送できないということです。
この通達により(巻末資料参照)一般道路を赤色灯を取り付けた状態では走行できないわけで、仮ナンバーの話から赤色灯などの灯火類にまで話が至ってしまったのです。
「じゃー道路使用許可を取って撮影しよう」ということになるのですが、この道路使用許可が厳しい条件があるんです。この点について、愛知県警に確認しまし た。
まず、考え方の出発点として、例をパトカーとすると前述のとおり赤色灯が取り付けてある時点で車両として違法の状態で(赤色灯は緊急自動車の許可が必要)、 違法な状態にある車両と一般車を混在させて走行 させることはできません。つまりパトカーを走らせるためには一般車を完全排除しないといけないということです。
上記のように角でカメラがありパトカーが走ってくるシーンを撮りたいとします。その場合、黄色の部分は当然に一般車を排除するため通行止めにする必要がりま す。
次にパトカーが黄色の道をUターンして戻ってこれない場合、回送路が必要になります。この回送路も赤色灯を付けた車が通るので、前記の考え方に従い一般車を 排除する必要がります。そこで、オレンジの部分も通行止めになります。
そして、次に通行止めによってどういう弊害が起きるかといことです。これが幹線道路だったら大渋滞が起きてしまいます。また、通行止めの区間内にあるファミ レスやコンビニも車で来るお客さんが入らなくなるので売り上げの減収になります。
そこで、道路を通行止めにするには、通行止めになる近隣のお店などのご協力が必要になります。渋滞については朝早く撮影するということで回避できることがあ ります。実際、映画『藁の盾』で名古屋市内の大津通の片側を早朝に通行通行止めにして撮影されたことがあります。
赤線が通行止めの範囲
これで道路使用許可がなかなか難しいという事情がわかっ ていただけたかと思います。
このような事情があり今般、パトカーや救急車が映画やドラマから一般道の走行シーンが無くなったのです。ただ、元々、違法な状態で、仮ナンバーの不正申請が きっかけで明 るみになりましたが、コンプライアンスが厳しい今日では、どちらにしても無くなっていたかもしれません。
■ 巻末資料
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