2014年2月8日
スバル・レガシィB4パトカー(無線警ら車)が2013年(平成25年)12月、新たに全国に配備されました。今回も値段から写真までFBIjobs.netの総力取材です。
これまでクラウンパトカーばかりでした。以前からレガシィパトカーは無かったの?レガシィB4はすべて四輪駆動で、二輪駆動の無線警ら車しか配備されない愛知県に配備されたの?という疑問がでてきます。その辺りもしっかり調べました。
レガシィB4パトカーは、2013年3月頃に無線警ら車4WD(四輪駆動)として配備され、同時期の無線警ら車2WD(二輪駆動)はトヨタクラウンパトカーが配備されました。
4WDしか存在しないレガシィに2WDの牙城は崩せなかったのです。しかし、2013年12月を納入期限とする無線警ら車の入札では、参加することができ、結果、愛知県警や大阪等2WDしか配備されない地域にも配備されました。
警察庁 レガシィ無線警ら車 配分表無線警ら車は、一部を除き警察庁(国)が一括して購入し全国に配分します。そして、その購入を決めるには一般競争入札という法制度があって、多数の企業が入札に参加したときには、一番、安い価格を提示できた企業が落札するという仕組みがあります。
しかし、そもそも入札に参加するには、無線警ら車の場合、「警察庁調達車両共通仕様書」と「無線警ら車 仕様書」の二つをクリアした車両を提示する企業しか入札に参加できません。
そこで、1つ目の疑問、レガシィは以前からパトカーとしてなかったの?という疑問です。
レガシィは、マニアックな話ですが、水平対向4気筒エンジンです。
それに対し、過去の仕様書では、「エンジン気筒数は、6気筒以上とすること。」と定められていたので、そもそも4気筒エンジンのレガシィが参加できる条件ではありませんでした。
そこには、「無線警ら車 仕様書」が改訂されたことにより、条件が変更になったことが大きく起因しています。
ということで、仕様書の対照表をつくってみました。
旧仕様書 | 新仕様書 |
車体は、全長4,700mm以上、全幅1,700mm以上、室内高は概ね1,200mmであること。 | 削除 |
駆動方式は、二輪駆動とすること。 | 削除 |
排気量は、2,500cc級以上であること。 | 排気量は、2,500cc級以上であること。 |
エンジン気筒数は、6気筒以上とすること | 最高出力は、145Kw(ネット値)以上であること。 |
なんとなくカラクリが見えてきましたか?
つまり、旧仕様書では、車体全長・全幅はレガシィもクリアしてますが、レガシィは二輪駆動ではなく4WDの四輪駆動です。エンジン気筒数は4気筒しかありません。ですから、旧仕様書では条件を満たさず参加できなかったのです。それが、先般、仕様書が改訂されて、これらの条件がクリアされたのです。
導入されたパトカーは、レガシィB4の「DBA-BM9」というFB25水平対向4気筒2,500ccDOHC16バルブシングルスクロールターボです。問題は、なぜターボ車か?ということです。「カッコいいから!!」が理由ではありません。
先ほどの新仕様書の「最高出力は、145Kw(ネット値)以上であること」という項目に注目です。これは、エンジンの最高出力(エンジンの仕事量)を意味しており、市販車カタログに記載されています。
200系クラウン 2,500cc(参考) |
レガシィB4 2,500cc(参考) |
レガシィB4 FB25水平対向4気筒2,500ccDOHC16バルブシングルスクロールターボ (パトカー) |
スカイライン 2,500cc(参考) |
|
最高出力(ネット) | 149kW | 127kW | 210kW | 165kW |
ちょっとショックですが、レガシィのノーマルの2,500ccでは、仕様書が求めるエンジンの仕事量が足りないので、ターボ仕様になったようです。
そこで、仕様書が求める145Kwという数値がどこから来たか?ということになります。
これは、推測ですがゼロクラウン(180系)の一世代前の170系クラウンの2,500ccが144kWなので、ここから設定されていると思われます。
とはいうものの、レガシィが仕様書を満たしただけではパトカーになれません。競争入札に参加し他の企業と競争して安い価格を提示しなければなりません。
今回は、クラウン(推定)のトヨタ自動車とレガシィB4の富士重工業が参加し、結論から申し上げると、富士重工業がトヨタ自動車より安い価格を提示し落札しました。
入札参加企業 |
入札金額 |
順位 |
一台あたりの金額 |
トヨタ自動車 |
1,450,727,400円 |
2 |
3,504,173円 |
富士重工業 |
1,194,720,000円 |
決定 |
2,885,797円 |
桁が大きくて読めませんが、トヨタ自動車が14億5千72万7,400円、これを今回のパトカー発注台数414台で割るとトヨタは一台あたり、3,504,173円となります。
これに対し富士重工業は、11億9千4百72万円で、これを414台で割るとレガシィパトカーの値段は2,885,797円です。その差は、一台あたり、618,376円で富士重工業の方が価格が安いということで決定しました。
実際の単価は、下記のように仕様によって価格が異なっており、契約内訳表で確認ができます。
内訳 |
数量 |
単価 |
金額 |
無線警ら車 |
408台 |
2,885,000円 |
1,177,080,000円 |
無線警ら車 沖縄向け 特別防錆処理 |
6台 |
2,940,000円 |
17,640,000円 |
合計 |
414台 |
1,194,720,000円 |
実際に警察庁が支払う金額は、契約総額に消費税5%を加算した額が支払われます。
ちなみに市販車レガシィB4の価格ですが、2,500ccのノーマルで2,363,550円から、2,500ccターボ(アイサイトモデルのみ)が3,451,350円から、となっています。
エンジンと富士重工業が提出した諸元表からは、2.5GT EyeSight《アイサイト》(DBA-BM9D4EV)がベースの感じですが、アイサイト(運転支援システム)は搭載されておらず、内装は、黒とシルバーのアイサイトが搭載されていない2.5i(DBA-BMMD44C)です。
どちらかというと2.5iがベースで、そこに2,500ccのターボエンジンと5速ATを積んだという感じです。
なお、何れの型式も2013年5月のマイナーチェンジにより、どちらも設定がなくなりました。マイナーチェンジした後の車両しか使わないクラウンパトカーとは一線を画しています。
これは、2013年5月以降の市販車の諸元表では、2,500cc、145kW以上という警察庁の仕様書の基準を満たすことができず、また、221kW出すターボも2,000ccしか設定がなくなったため、こちらも2,500cc以上という仕様書の基準を満たすことができないからです。
運転席は、市販車の2.5iの標準装備設定がプッシュボタン式エンジンスタートではなく、従来のキーシリンダー型エンジンスタートしか設定がないためか、パトカーもキーシリンダー型エンジンスタートとなっています。
ハンドルは、本皮ステアリング仕様となっています。クラウンではウレタンステアリングとなっていますが、レガシィでは、そもそも市販車にそうした設定が無いためと思われます。
座席は、手動で仕様書の設定により、掃除がしやすい黒のビニールレザーシートとなっています。本皮シートではありませんので、贅沢仕様と間違わないでくださいね。
クラウンパトカーでは、市販車の内装の贅沢に見える木目調パネルを嫌ってか殆どの部分を特別のつや消し樹脂パネルが採用されています。私の主観ですが、レガシィでもシルバーのパネルは贅沢感がないものの市販車に設定の無いつや消し樹脂パネルで、特殊仕様車という感じを出して欲しかったです。
塗装色は、パトカーなので白と黒のツートンは当然なのですが、同じ白でもクラウンパトカーの白より若干クリームが入ったような感じの白です。これは、市販車と同様のパール色を採用しているためです。
その他、ドアウィンドウに取り付けるドアバイザーは各都道府県の負担となっており、愛知県警自動車警ら隊によれば、予算が付いたら取り付けるそうです。ちなみに市販車の場合、一台あたり取付け費込みで32,550円です。
また、タイヤは撮影した時が2月なので、冬用のタイヤを装着しています。こちらも各都道府県の負担で、かつ、クラウンパトカーとタイヤサイズが異なるため、新たに購入したとのことです。
外観塗装については、富士重工業から提出された『製作図面承認申請書』で確認ができます。
諸元表によれば、EJ25水平対向4気筒DOHC16バルブシングルスクロールターボ、E-5AT(前進5速、後退1速)、タイヤは225/50R17でアルミホイール装着で、諸元表は市販車のBM9と同じとなっています。
また、燃料は指定燃料がハイオクガソリンとなっており、愛知県警自動車警ら隊ではハイオクガソリンを入れているとの事。レギュラーガソリンを使い続けたときのエンジン故障が、メーカーからの保証が受けられないとの情報があったからだとか。
そこで、FBIjobs.netが独自に富士重工業に問い合わせたところ、市販車ではハイオク仕様の車にレギュラーガソリンを入れ続けてエンジンが故障した場合、保証の対象外とのことでした。ただ、他のメーカーにも同じ問い合わせをしましたが、市販車では同様の対応とのことです。
200系クラウンパトカーでは、ルーフに小糸製作所製の警光灯が取り付けられていましたが、レガシィパトカーでは、ゼロクラウン(180系)パトカーと同様のパトライト製が取り付けられています。
また、無線警ら車ではおなじみの警光灯が上昇下降する昇降機が、仕様書で取付けが定められており、カバーには、愛知県警自動車警ら隊のマークが貼られています。
サイレンアンプは、パトライト製です。
2013年3月に配備されたレガシィは、フロントバンパー部に電球式の補助警光灯が取り付けられていましたが、2013年12月に配備の無線警ら車は、仕様書の改訂によりLEDに変更になりました(下の写真がLED)。
ただ、厳密には仕様書がいうフロントバンパーではなくフロントグリルに取り付けられていますが・・・
クラウンパトカーでは、助手席にある無線機格納装置は特別部品で作られていましたが、レガシィでは「ダッシュボードを改造しました」という感じが否めず残念です。
また、クラウンでは、無線機格納装置の下にある無線機等の電源の端子台が、レガシィでは助手席サイドにあって、収まりが悪いのが残念です(黄色○内が端子台で上がクラウン、下がレガシィ)。
愛知県警自動車警ら隊では、自動車警ら隊というだけあって常にパトカーでパトロールをして不審車両や不審者の職務質問や交通違反の取締りを任務としており、遠距離、長時間の運転をするため、レガシィは、クラウンパトカーに比べると長時間の運転にはやや不向きとのこと。
オートマチックをマニュアルのように操作したり、エンジンブレーキを使うときは、トヨタ車ではシフトレバーのみで操作するのに対し、レガシィはシフトレバーとハンドル部のスイッチで操作するようになっていますが、あまり使わないので、そこは気にならないとのこと。
加速性能は抜群にいい。とくに「S# スポーツ・シャープモード」というエンジン性能を余すことなく出すモードの操作ボタンががハンドル部にあるのですが、加速が良すぎて、逆に「使うな!」ということになっているそうです。
それというのも、車で逃走する犯人を追跡の際に直ぐに真後ろに追いついてしまうので、逃走犯の逃げたいという心理に拍車をかけ、更に無謀な逃走をして事故を起こす危険性が高くなるからだそうです。
追跡には、近すぎず遠すぎず、後日捜査のための証拠採取に力を入れてることが重要で、その場で逮捕するより、第三者や犯人の安全確保が最優先。証拠さえしっかり押さえていれば、後日逮捕も容易だそうです。
ゼロクラウンパトカー(180系)の置き換えが、今後、2年の間で行われ、その入札が2回ないしは3回あると思われ、今後のトヨタと富士重工業のパトカーの競争の行方が楽しみです。
最後になりましたが、今回も愛知県警自動車警ら隊にご協力を得ました。感謝いたします。
※1 撮影は、県警本部に確認の上、所属長の許可を得て、職員立会いの下に行っています。また、その他の写真は、公の行事の際に撮影したものです。
※2 仕様書等は、警察庁に対する「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の手続きによるものです。
筆者紹介
パトカー好きの某自動車会社のパトカーとは縁も所縁もない部署の技術屋さん。ちなみにIT職とも無縁。
This site has nothing to do with FBI (Federal Bureau of Investigation).
I support activity of FBI.
If you want to look at a homepage of FBI, trace the following link.
https://www.fbi.gov/
https://www.fbijobs.gov/