2013年11月16日
警察が使用する一般的によばれる覆面という車両を定義するならば、一般車両に溶け込んで、警察と気づかれず秘匿に捜査活動を行う際に使用する車両と定義できるでしょうか。
ところが、2013年5月に覆面車両として使用されているキザシのサイレンに不具合があり、国土交通省にリコールを届け出た事により報道され、その存在が注目されることになりました。
これが仮にクラウンとかスカイラインだと大きな注目にならなかったのでしょうが、キザシというあまり街で見かけない車両だっただけに、“キザシ=覆面”という構図が世間に明らかになってしまいました。
つまり、キザシを街中で見かけると捜査車両の可能性が非常に高いということが世間に認知されてしまい、前述の定義に反するという訳です。
スズキ キザシ、SX-4のリコールに関する対応の件(スズキ株式会社(警察庁保有))
上記の資料ですが、200系クラウンパトカーのリコールのときは登録番号が開示されましたが、さすがに捜査車両ということもあって、登録番号と所属警察署は非開示となりました。でも、“キザシ=覆面”なのです。
なぜ覆面車両がキザシなのでしょうか?
その答えは簡単です。競争入札で他のメーカーよりも安い価格で納入すると提示できたからです。
平成25年12月15日を納入期限とする覆面車両223台(正式名称を「私服用セダン型無線車(2,000cc級)」といいます)の入札結果をみてみましょう。
競争入札比較表によれば、以下の価格になります。
順位 |
入札参加業者名 |
入札価格 |
入札価格÷223台=1台あたりの平均価格 |
決定 |
スズキ(株) |
201,012,400円 |
901,401円 |
2位 |
富士重工業(株) |
312,433,000円 |
1,401,045円 |
3位 |
マツダ(株) |
370,242,200円 |
1,660,279円 |
4位 |
トヨタ自動車(株) |
386,216,400円 |
1,731,912円 |
入札価格は決定したスズキでも2億円を超えていますが、一台あたりの平均は90万円です。ちなみに市販車のキザシのメーカー希望小売価格は、消費税抜き 2,655,000円で、また、他のメーカーがどういう車を提示したかについては不明です。
実は、この価格には詳細があって、契約書によればナビなどの装備の有無によって、1台あたりの価格は下記のようになっています。
品名 |
台数 |
単価 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機 |
38 |
848,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機 沖縄向け特別防錆処理 |
1 |
898,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機・ナビ |
61 |
888,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機 沖縄向け特別防錆処理 |
1 |
938,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機・警光灯・サイレン |
62 |
898,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機・警光灯・サイレン・ナビ |
59 |
948,800円 |
私服用セダン型無線車(2,000cc級)無線機・警光灯・サイレン・ナビ 沖縄向け特別防錆処理 |
1 |
998,800円 |
入札に提示できる車両は、仕様書に示された項目を満たしている必要がありますが、白黒の無線警ら車等の特別車両と異なり、殆ど変わった項目はないので、2,000ccのセダンであれば参加が可能なのです。そして、競争入札なので価格の一番安い価格を提示した業者が落札し、それが、スズキのキザシだったのです。どのメーカーも軽乗用車並の値段で、結構、お勉強しているんですね。
平成25年12月25日納入期限 私服用セダン型無線車(2,000cc級)配分表
筆者紹介
パトカー好きの某自動車会社のパトカーとは縁も所縁もない部署の技術屋さん。ちなみにIT職とも無縁。
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