2013年4月17日
もうすぐ参議院選挙が近づいていますが、その試金石ともなる衆議院総選挙が2012年12月16日の投票が午前7時から午後7時59分59秒まで行なわれ、午後8時0分0秒になると各テレビ局、新聞社のホームページは一斉に各政党の予想獲得議席、そして、いち早く「当確」、いわゆる当選確実が発表されました。
でも、投票が締め切られたばかりで、開票作業も始まっていないのになぜ当選確実が解るのでしょうか?
まず、当選確実という言葉からみていきましょう。
当選確実(当確)というのは、開票途中で当選が確実視されるということを各報道機関の責任において報道することを言い、各自治体の選挙管理委員会の一切かかわりの無いところで行なわれるもので、公式な発表ではありません。
報道機関にはその選挙区の責任者がいて、投票前日までの世論調査や期日前投票と当日の出口調査の数値、開票所での開票作業の状況などを総合的に勘案して、当選が間違いないだろう、と判断したときに「当確」が発表されます。
したがって、「当確」は各報道機関によって発表の時期にバラつきがあり、間違いが起こることもあります。
この「当確」の判断に一番大きく影響を及ぼすのが出口調査です。
出口調査とは、投票当日または期日前の投票所の出口で、投票を済ませた方に「どなたに投票しましたか?」等をお尋ねするもので、投票所の出口でお尋ねするので出口調査といいます。
出口調査が電話などの世論調査より重視されます。その理由として、世論調査は、確かに有権者のその時点の意識は反映されるかも知れませんが、投票直前にその意識が変わるかもしれません。それより投票を済ませたその出口で聞いたほうが確実ですね、という簡単な理由です。
問題は、出口調査に協力していただけるか、協力していただいても投票先の本当のことを答えてくれるのか、ということです。
そこで、今回、私がある報道機関の出口調査の調査員として愛知4区の投票所で出口調査をして来ました。
愛知4区は、愛知県名古屋市の瑞穂区、熱田区、港区、南区という、商業地域、住宅街、港湾地域が広がる名古屋南西に位置し、有権者は約37万人です。
候補者は5人です(届け出順)。
刀禰 勝之さん | 新人 | 民主党 | 元県議 |
牧 義夫さん | 前職 | 未来の党 | 元厚生労働副大臣 |
山本 洋一さん | 新人 | 維新の会 | 元日経新聞記者 |
工藤 彰三さん | 新人 | 自民党 | 元名古屋市議 |
西田 敏子さん | 新人 | 共産党 | 党県委員 |
「自民に追い風」、「民主に逆風」、「第三極の参戦」などといわれる中で、この選挙区は、前職の牧義夫さんが民主党を消費税などの増税を含む社会保障法案に反対し民主党を離党、小沢一郎氏の国民の生活が第一に参加し、その後、河村たかし名古屋市長の減税日本、滋賀県知事の嘉田氏の未来の党に合流、維新の会やみんなの党とともに第三極と位置づけられました。
民主党は、地盤のある牧さんに対し、愛知県議の刀禰勝之さん(新人)を擁立し、選挙期間中は、民主党の野田総裁(当時)も選挙区に入り演説を行ないました。
自民党は、小選挙区比例代表並立制を導入後、勝ったことがないといわれる愛知4区に名古屋市議の工藤彰三さん(新人)を擁立、第三極の維新の会は山本洋一さん(新人)、共産党は西田敏子さん(新人)を擁立しました。
愛知4区は、激戦区とまでは行かなくても混戦した選挙区でした。
出口調査は、投票所から出てきた人を対象に行ないます。出口調査を行う投票所は、統計学的に選ばれたもので数箇所あります。
対象となる方を調査員が選ぶと偏りがでて正確なデータが収集できません。いくつか方法があり、出てきた15人目の人とか、男女交互に最初に目に留まった人といったように報道機関によって異なります。
私の場合、男女交互の方式だったので声を掛けた方は230人くらいになります。その中で、答えてくれる方、断られる方が居られます。私の場合は、断る方と答えていただける方が半分半分でした。
なお、調査は、アンケート用紙とペンをお渡しするので、その用紙に有権者の方が自ら記入していただくという方法で、声に出して答えていただく必要はありません。
私が担当した投票所では、小選挙区は出口調査と選挙管理委員会が最終的に発表した票との割合は次のような結果となりました。
候補者 |
得票数 |
得票総数に占める割合 |
出口調査の有効な回答に占める割合 |
工藤 彰三さん(自民党) |
63,932票 |
34% |
33% |
牧 義夫さん(未来の党) | 41,730票 |
22% |
22% |
山本 洋一さん(維新の会) | 33,144票 |
18% |
19% |
刀禰 勝之さん(民主党) | 30,731票 |
16% |
19% |
西田敏子さん(共産党) | 18,351票 |
10% |
7% |
出口調査の有効な回答に対する割合と有効投票数に対する割合が上位2名の方はほぼ同じという結果が出ました。
ただ山本さんと刀禰さんの3,000票の差では出口調査では同数の割合となっており、出口調査からの判断が難しいという結果になりました。もちろん一箇所の投票所なので、他の投票所を合わせると少し変ってくるかもしれません。
次に比例区です。私が担当した投票所では次のとおりの結果となりました。
政党名 |
得票数 |
得票総数に占める割合 |
出口調査の有効な回答に占める割合 |
自民党 |
1,966,007票 |
28% |
25% |
維新の会 |
1,356,970票 |
19% |
19% |
民主党 |
1,321,402票 |
19% |
20% |
公明党 |
779,577票 |
11% |
7% |
みんなの党 |
644,087票 |
9% |
10% |
未来の党 |
511,048票 |
7% |
10% |
共産党 |
387,461票 |
5% |
7% |
社民党 |
136,316票 |
2% |
1% |
幸福実現党 |
29,739票 |
0% |
0% |
当然、比例区は東海ブロックという愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の4つの県からなっており、それぞれ選挙区に政党の地盤があるので、一つの投票所では判断ができないということになります。
しかしながら、ご覧のとおり、出口調査は、実際の得票数と近い数値が一つの投票所からでもあらわれるということもまた事実のようです。
こうした出口調査の結果があらわれるのは、有権者の皆さまのご協力があるからこそ成り立つものです。
今回、私が担当した愛知4区の投票所の有権者の皆様には心から感謝いたします。
なお、出口調査では、投票先の他、投票された方の年代、投票に際して重視した政策、ふだんの支持政党などをお尋ねしますが、個人が特定される質問は一切ありません。また、出口調査は、選挙管理委員会に事前に承諾を得て、調査する当該投票所の管理者に許可を得ているとともに、報道機関であるという身分証明書を呈示しておりますので安心してください。
そして、出口調査で合わせとお尋ねする投票の際に重視した政策などは出口調査の結果とともに公表され、その後の政治にも影響することと思います。
今回、調査にあたって本当に貴重な政治へのご意見も賜り、重ねて愛知4区の皆様にお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
こうした皆様の誠意や政治への思いのこもったご協力があって、当確がいち早く、しかも正確な速報をすることができるのです。
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