電車を貸切る値段

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電車を貸切る値段

2024年9月2日 

先日、あるドラマのロケでエキストラで名古屋市営地下鉄名城線の電車内を使用した撮影に参加してきました。そこで、今回、電車を貸切 るといくらかかるか調べて みました。

調べたのは、福岡市交通局、名古屋市交通局、東京都交通局です。

結論から申しますと、個人、企業・団体への電車の貸出、貸切りは行っていないとのことでしたが、ドラマや映画のロケでは様々な条件付きで貸しているとのことでした。

福岡市交通局

福岡市交通局の地下鉄は、藤原竜也さん主演の『デスノート』(2006年)使用されたという実績がありますが、ロケで電車を使用をする際の料金等の規定等は存在しないとのこと。

また、『デスノート』の撮影の際、いくらで電車を貸したのかも文書の保存期間が過ぎて不明とのことでした。

東京都交通局

東京都交通局は、都営バス、電車(都電)は個人、団体・企業への貸出しは行っていますが、地下鉄高速鉄道は個人、団体への貸出しは行っていないとのこと。

また、映画やドラマ、CMのロケでは使用が可能とのことで(日暮里・舎人ライナーは除く)で、それぞれ規定があります。ただ、地下鉄に関しては運行密度が高い こと、他社線への相互乗入れがあることから臨時列車を走らせての対応は行っていないとのこと。

また、営業列車での撮影ができるそうですが、ご乗車されているお客さんの了解を得られれば良いとのことですが、駅に到着するたび新たなお客さんが乗って来て、その全員に承諾を得 るのは現実的ではありません。

下記の「営業線使用」「地下鉄高速電車」の料金はそうした事や、もしくはホーム上で入ってくる電車を撮影するなどを想定したそうです。

昔はゲリラ撮影のような一般のお客さんが居る中で平然と撮影されることもありましたが、昨今、一般の利用者のプライバシー、肖像権等の問題で制約があります。

これらの車両を使う点について、「他の鉄道会社さんは列車内での撮影をどどうやって協力されているのか知りたい」とご担当者の方は述べられていました。

東京都交通局は、駅などの施設を使用したロケには多数協力しているそうで、後述するように列車が走っている車内のシーンを電車の車庫で撮影するというようなことは、実績はないが車庫を管理する部署と調整出来たら協力したいとのことでした。

私がお話しした感触ですが、東京都交通局は、様々な問題がクリアできれば是非とも協力したいという印象を受けました。

PDFで「東京都交通局撮影許可等取扱要領(R5.3.30改正)」全文をダウンロードする

名古屋市交通局

今回、私が参加したドラマのロケは、走行車内でのシーンは名城線のナゴヤドーム近くの地下にある大幸車庫で。ホームでのシーンは名城線の盲腸線である名港線の名古屋港駅が使用されました。

名城線は、環状線でぐるぐると1時間をかけて回っている路線と金山駅から分岐し名古屋港に至る名港線という路線があります。

PDF で路線図をみる

名城線は、サイドレール方式といって線路の脇に高圧電流が流れていて、そこから集電するので台車に高圧電流が流れており、ホーム上での撮影は支障ありませんが 車庫での撮影は誤って触れる危険性があります。

デンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタが主演した『サブウェイ123激突(原題:The Taking of Pelham 123)』(2009年)でもニューヨークの地下鉄が使用されましたが、同じ構造のためなかなか協力が得られず、得た後もサイドレールの危険性について出演者とスタッフに 教育が施されたことから、サイドレールの危険がわかると思います。

そこで、なぜ名城線だったのかお尋ねしたところ、車庫での撮影が可能であったこと、名古屋港駅が日中は二面あるうちの片面しか使用されていないため、もう一方が撮影で使用できたことから名城線で撮影することになったそうです。

また、上記のサイドレールの危険性については、車庫では警備員を配置して台車に近づけないように措置することで許可したとのこと。

撮影内容

放映前なので、どのようなシーンだったか子細にお話しできませんが、暴力シーンがあります。東京都交通局では撮影に関し下記のような規定があります。

  ●東京都交通局の撮影規則
   ・お客様のご迷惑となるもの
   ・喫煙・飲食を伴うもの
   ・暴力を伴うもの
   ・危険な行為を伴うもの
   ・当局のイメージダウンになるもの
   ・公序良俗に反するもの
   ・その他、当局の業務に支障をきたすのもの
https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/other/shooting/

東京都交通局では、「暴力シーン、特に電車内での殺傷事件が過去に何件も起きていることから、それらを想起させるようなシーンは一切協力できない」とのことで、西村京太郎サスペンスのようなドラマはどうかと尋ねたところ、「前述以外のドラマなど場合は、その物語の全体で判断する」とのことでした。

今回のドラマの撮影で名古屋市交通局に対して尋ねたところ、「車内でのシーンだけを取るとネガティブなものであるが、物語全体を通してみると主人公が前向きに明るく生きていくというポジティブな内容なので許可した」との回答でした。

電車の貸切のお値段

今回の撮影では、車庫での撮影が準備を含めて2日間、行われました。電車の車両の周りにセットをつくり照明効果で走っているように仕立てて電車内での出来事を撮影しました。下記が車庫(施設利用料)が電車も含めての貸出料金です。

施設使用料(金曜日) 30,000円×7時間=210,000円
立会料4名(金曜日) 12,000円×7時間=84,000円
施設使用料(土曜日) 45,000円×10時間=450,000円
立会料4名(土曜日) 18,000円×10時間=180,000円

以上が車庫内での撮影の費用になります(見積ベース)。電車の使用料が入っていないと思い確認したのですが、電車は施設として算出したとのこと。

次に日曜日の撮影ですが、こちらはまず大幸車庫から金曜日と土曜日に使用した車両を名古屋港駅まで回送電車で運びます。どの電車でもいいのでは?と思うかもしれませんが、土曜日に撮影した車内は路線図、車内広告などが劇用に変更されているので同じ車両が必要です。

その後、ホームでの撮影に使用してホームから引上線に一旦引上げて、方向転換してホームに再度、入線します。その様子を様々なアングルで何回かに別けて撮影し ます。

その後、撮影が終了した後、電車は再び回送電車として車庫に戻ります。これらの回送電車は、通常の旅客列車の合間を縫って特別に時刻が設定されています。この電車を使用している時間の合計が8時間と見積もられました。それとは別に基本料金がかかります。

臨時列車一式(基本料金) 240,000円

上記の料金は旅客線を走るだけで必ず発生する基本料金とのこと。
次に上記の電車を使用した料金です(見積ベース)。施設使用料は、ホーム上で撮影をしたためです。

臨時列車 240,000円×8時間稼働=1,920,000円
施設使用料 20,000円×9時間=180,000円
立会料1名(日曜日) 4,500円×8時間=22,500円

つまり、電車を8時間借りると24万円と192万円の合計216万円掛かるということです。ちなみに名城線・名港線の電車は6両編成で、下記の通り規定をみると桜通線は5両編成ですが、区別がないので編成数は関係ないようです。

PDFで「名古屋市交通局施設の撮影許可等に関する取扱要綱 別表1別紙1、2)」全文をダウンロードする

もし借りれるのなら216万円払っても通勤電車を貸切ってみたいですか? どうでしょうか?